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脱法ハーブを吸った②

※以前STORYS.JPというサイトに掲載したところ削除されてしまった記事をそのまま記載します

 

脱法ハーブを「二度とやるか!」と心に誓ってから3年以上が経ったある日。
脱法ハーブで自動車暴走、などのニュースが流れ始め脱法ハーブに対する世間の認知度は高まってきていた。
自分は喫煙者となり、ドラッグについての知識も本やネットなどで身につけていた。
ニュースで観てハーブという言葉とかつての経験を思い出した自分はこう考えていた。

「あの時失敗したのは量とセッティングが悪かったからバッドに入っただけじゃね?」

薬物は使用した時の気持ちが増幅される。
自分は高校生の頃初めての予想外の経験にびっくりして、「どうしよう!」と思ってしまった。
その「どうしよう!」という不安な気持ちが増幅されて、楽しむ方向に舵を切ることができずに混乱≒バッドに入ってしまったのである。
「それならば、うまく舵を切ればまだ見ぬ世界を経験できるのではないか?」そう考えていた。

まずは「自分の行ける範囲の栄えている地域+合法ハーブ」で検索してみた。
すると大体4、5件はヒットした。
驚くべきことに、最寄駅の近くにも脱法ハーブ店は存在していた。
行けるところは全て行ってみた。
「二度とやるか!」の時にボングも捨ててしまっていたので、パイプ探しも兼ねていた。
パイプは見つからなかったが、雰囲気が合い扱う銘柄も多い店が何件か見つかり、そこを行きつけと決めた。
パイプはまたも楽天で購入した。
今度はボングではなく、収納や持ち運びに便利なモンキーパイプを選んだ。

荷物が届くと早速電車で一駅の店と最寄駅の近くの店に向かい、それぞれの店のオリジナルのブレンド品を1袋ずつ買った。
合計5000円ほどだったと思う。
帰宅したら、自室の隣のベランダで最寄駅の近くで買った方のハーブを早速吸う。
以前と違い喫煙者なのでベランダにいても怪しまれないし、いざという時パイプは畳んでポケットに入れられる。
タバコで喫煙作法に慣れていた自分はすんなりと2、3口吸うことができた。
しばらくベランダでしゃがみこむ。

・・・
なんか自分の意識が天に向かっているような、天から自分を俯瞰しているような。
あっ思い出した。
懐かしい、「あの時」の感じだ。
高校生の頃経験した、「0.1秒前何をしていたのか忘れてしまう」感じだ。
自分は「ベランダでしゃがんでいる」ことを忘れていた。
ここでびっくりしたり家族の目が不安になったりしてしまうと、また無限ループに陥ってしまう。
立っているのを忘れつつ、ベランダのドアを開け閉めしているのを忘れつつ、部屋に戻ろうとしていることを忘れつつ、なんとかうまく波に乗りながら部屋で横になることができた。
その日は懐かしさに包まれながら落ち着き、自然と眠りについていた。

起床して、昼頃に今度は違う方のハーブを吸ってみた。
「忘れる感じ」も予想できていたので、うまく波に乗りながら部屋に戻り横になる。
当時は携帯電話を持っていなかったので、ネット閲覧用に使っていたiPod touchを眺めていた。
すると、なんとiPod本体が一昔前のゲームの3Dのような感覚で見えるのである。
以前より住人が増えた合法ハーブまとめwikiのコメント欄で見かけた、「部屋の物が3Dに見える!」とはこのことだったのかと思った。
それからは特に目立ったこともなく、効果の切れ際は非常にリラックスした気持ちになっていた。

後日。
電車で二駅の店と最寄駅の近くの店で違う銘柄をそれぞれ購入。
どちらの方か忘れたが、夜に吸って今度は音楽をかけてみることにした。
音楽が心に響く。
響きすぎる。
低音は骨まで響き、高音はまるでコンポ自体が歌っているかのよう。
次第に、コンポのスピーカー部分が口のように、自分で動かして歌っているかのような幻覚が見えた。
自分は感動してとても幸せな気分になっていた。
それからハーブを吸うなり音楽を聴くのが日課になった。
コンポが歌う。
加湿器が歌う。
間接照明が作り出した影が動く。
楽しくなった自分は脱法ハーブ店に何度も赴き、行くたびに新しい銘柄を追加していた。
1袋4000円が相場の中、6000円もするハーブも見つけた。
「強気な価格設定ですね。」
そう店員に言うと、
「これは業界人の中でも一目置いている品物です。おすすめですよ。」
と言われて乗せられてしまったこともある。

自分は何個かハーブを所持していたが、その中に一つまずいものがあった。
時々wikiのコメント欄で「一欠片でも持っていかれる」というような書き込みを見かけていたのだが、まさしくそのようなハーブに当たってしまったのだ。
いつものように吸って部屋に戻ると、固まった。
部屋の照明のスイッチをガン見したまま、視線を動かすことができない!
「ガガガガガガ」と騒音が頭の中で鳴り響く。
騒音の中思考が停止して、ただただスイッチをガン見し続ける。
地獄だと思った。
騒音が止まりやっと動くことができたかと思うと、今度は何か声が聞こえてくる。
視界いっぱいに大量の泡のようなものが溢れ出し、
「あゎ~♪」との高い声が響き出した。
そして美しい旋律の歌が流れ始め、自分は感動して思わず涙を流していた。

それからは様々な幻覚を見た。
思い出せるけど説明不可能なものや、音楽に合わせて人類の進化を教えてくれるようなものなど。
どれも何か意味のあるもののように感じては、感動し涙を流していた。
幻聴も聞こえたことがある。
とても優しい幻聴で、またも自分は泣いていた。

精神的に落ち込んでいる時もハーブを吸った。
吸うと楽になったが、足がビクッと動いたり、心臓がズキン!と痛んだりしたこともある。
落ち込みがMAXの頃、自分はハーブを使っての自殺を計画していた。
「忘れる」感覚を活かして、「息を止めていることを忘れて死ぬ」というものだ。
ベッドの上で羽毛の掛け布団に顔を乗せ、体重をかける。
すでに息が苦しい。
息をすることを止めてみた。
限界まで止めた頃、おそらく気を失ったのか、楽になった。
その時、生命の存在する意味について示すかのような幻覚?はたまた夢?を見た。
その内容については書かないが、意識が回復した頃、自分は何か満足感のようなものを得ていた。
自分は何かを悟ったのだ。

あくる日、ハーブで嘔吐した。
吸って寝転んだ後、急に自分自身を斜め下から見上げているような感覚に陥り、そのまま嘔吐してしまった。
吐いている最中「汚忌多くん死んじゃったなり~!」というような幻聴も聞こえた。
窓を開けたまま嘔吐したので、通行人に不審がられたかもしれない。
それからはハーブは机の中に封印してしまった。

ハーブをやめた自分は、違うものに目をつけていた。
「合法パウダー」である。
バスソルトとも呼ばれ、実物を見たことはないが見た目はまるで覚せい剤のようだ。
主な使用方法は、タバコの先にちょんちょんとつけてそのまま火をつけてタバコと一緒に吸う、というものだった。
電車で二駅の店と最寄駅の近くの店で取り扱っていたので購入し、吸ってみる。
ネットで調べた通りに最初のひと吸いで思いっきり息を止め、ゆっくり吹く。
息を吹いた時、自分はとろけんばかりの快感に包まれていた。
これには癖になり、家のみならずあらゆるところで毎日のように吸った。
合法パウダーのケースは非常に小さい筒状で、開け口からちょうどタバコを1本差し込めるようになっている。
ハーブと違ってパイプを持ち歩くこともないし、もし吸っているところを見られたとしても普通の喫煙にしか見えない。
路上で吸って、活力が漲りながら散歩したりした。
しかし合法パウダーはハーブとは違って依存性が凄まじかった。
ひどい時には5分おきに吸っていたし、値段も高かったので、中止させるには苦労した。

しばらくして、自分は急に「合法麻薬」そのもの飽きてしまい、ハーブもパウダーも全て捨ててしまった。
昨今脱法ハーブは危険ドラッグと呼ばれるようになり、販売店は自治体の取り組みや警察の根強い捜査などで壊滅した。
ハーブやパウダーなど、危険ドラッグはもうやろうとは思わない。
しかしハーブで窒息した時得た悟りは自分の人格や世界観に今でも影響を与えている。